2011年1月26日水曜日

IgA腎症の病巣の一つ「慢性上咽頭炎(鼻咽腔炎)」

寛解しても再発する可能性が5%


写真:「慢性免疫病の根本治療に挑む」の表紙

前回に続き、"IgA腎症患者なら必ず読むべき一冊" 堀田先生の著書「慢性免疫病の根本治療に挑む」から学んだことシリーズ第二弾。

IgA腎症は、扁摘パルスにより「寛解」することができる。しかし、それは炎症が消えて一時的に落ち着いた状態になるというだけで、場合によっては再発する可能性もまだある。つまり、「完治」とは微妙にニュアンスが異なる。

再発してしまう確率は、約5%らしい。例えば、扁摘(口蓋扁桃の摘出)を行わずに寛解した症例の再発率が約30%らしいので、扁摘したほうがIgA腎症の再発を抑えられることは明らかだが、扁摘していても約5%は再発する。また、扁摘に加えてステロイドパルスを実施した後でも血尿が消えない(糸球体毛細血管の炎症が収まらない)症例が約20%あるという。


 再発する5%の症例と血尿が消失しない20%の症例は、他のIgA腎症とどこが違うのだろうか?
 長年、慢性免疫病の治療を行ってきた経験から、このような患者には扁摘後も、何らかの病巣感染が残っている可能性が大きいと考えている。
引用元: 書籍「慢性免疫病の根本治療に挑む」堀田 修・著)

IgA腎症の主な病巣感染は4つ

というわけで、前回のエントリー「IgA腎症 = 病巣感染 × 生活習慣」でも書いたが、堀田先生は著書「慢性免疫病の根本治療に挑む」の中で、IgA腎症の主な病巣感染として次の4つを挙げている。

  1. 遺残扁桃(扁摘の際に取り残してしまった口蓋扁桃)の感染
  2. 虫歯と歯周病(根尖性歯周囲炎)
  3. 副鼻腔炎(蓄膿症)
  4. 鼻咽腔炎(慢性上咽頭炎)
一つめの遺残扁桃なら、再度摘出をしてステロイドパルス療法を行う。二つめの虫歯や歯周病、三つめの副鼻腔炎なら、治療をして治す。しかし、四つ目の「鼻咽腔炎(慢性上咽頭炎)」は少し事情が違うらしい。

「鼻咽腔炎(慢性上咽頭炎)」は耳鼻科医も知らない?


イラスト: 鼻咽腔の位置。鼻咽腔とは、鼻腔と咽頭がつながる部分で軟口蓋の裏側のやや広い空間のこと。鼻の穴の奥で、のどちんこの裏側あたり。
© IgA腎症根治治療ネットワーク

 「鼻咽腔炎」という医学用語は、耳鼻咽喉科学の教科書にも載っておらず、医師にとっても耳慣れない概念である。しかし鼻咽腔炎炎は病巣感染症において、慢性扁桃炎と双璧をなす重要な慢性感染だと考えられ、その実態を患者ばかりでなく医師の側も、しっかり認識すべきだと思う。
引用元: 書籍「慢性免疫病の根本治療に挑む」堀田 修・著)

なんと、耳鼻咽喉科の医師にとっても耳慣れないものらしい。鼻咽腔というのは、鼻からノドに抜ける気道にある空間で、二つの鼻の穴から吸い込まれた空気が合流するところ。位置的にはのどちんこの上あたりで、風邪をひいた際には炎症を起こすことが知られているそうだ。そして、この鼻咽腔には、吸い込んだ空気中に含まれるホコリや雑菌がその内壁に付着して、それが炎症の温床となるが、困ったことにこの鼻咽腔の炎症もまた自覚症状がない。

塩化亜鉛でわかる「鼻咽腔炎」

この鼻咽腔炎の診断は、肉眼ではわからないので、塩化亜鉛を綿棒にしみこませて鼻咽腔に塗布して、しみるかどうか、綿棒に血液が付着するかどうかで行うしかないらしい。何ともアナログな方法だ。

ウエちゃんも自覚症状は全くなかったが、堀田先生の初診の際、実際に塩化亜鉛をしみこませた綿棒を両方の鼻の穴に突っ込まれた。ちょっとしみるような感じがして、綿棒に血液が付着したのをこの目で確認した。治療も同様に、塩化亜鉛を綿棒にしみこませて鼻咽腔に塗布するらしく、回数を重ねるごとに徐々にしみなくなり、血液の付着もなくなっていくそうだ。

 特に風邪の初期に鼻咽腔に塩化亜鉛を塗る効果は大きく、私の知るどのような風邪薬よりも有効である。また頭痛にも非常に効果がある。私の経験では風邪の症状のあるなしに関わらず、頭痛を訴える患者さんの6~7割に効果があり、頭痛に加えて肩こりのある人は通常は肩こりも軽快する。これは鼻咽腔そのものに自覚症状がない場合でも、鼻咽腔に起きている炎症の放散症状として頭痛や肩こりが生じているものと思われる。
引用元: 書籍「慢性免疫病の根本治療に挑む」堀田 修・著)

「鼻咽腔炎」をめぐる医療現場のジレンマ

いずれにしても、この鼻咽腔も口蓋扁桃と同様に、IgA腎症の病巣となっている可能性が高いのだろう。堀田先生の著書には、鼻咽腔炎を治療することによって、さまざまな疾患が画期的な回復を見せた症例がいくつか紹介されている。しかし、実際の医療現場では、専門分野別医療となっている日本の医療の現状が大きく立ちはだかるのだという。

 扁桃と同様、鼻咽腔および鼻咽腔炎もまた、慢性免疫病においては重要な概念だと思われる。しかし病巣扁桃の概念は少なくとも耳鼻科医には認識されているが、病巣感染としての鼻咽腔炎は、内科医はもちろん耳鼻科医にもほとんど認識されていないのが実情である。
 専門分野別の医療のもとでは、鼻咽腔は耳鼻科の領域になる。もし内科医、整形外科医や皮膚科医が、目の前の患者の鼻咽腔に問題があるのではないか、と気づき、耳鼻科医へ紹介状を書いたとしても、現状では、耳鼻科医からはほぼ100%「異常なし」という返信が戻ってくるだろう。そして、二次疾患治療としての「鼻咽腔炎の治療」という選択肢は、これにて打ち止め、となってしまう。
引用元: 書籍「慢性免疫病の根本治療に挑む」堀田 修・著)

政治でもよく縦割り行政の弊害がいわれるが、医療現場においても似たような問題が存在しているらしい。この書籍は2007年4月初版なので、もうすぐ4年が経過するから、今は少しでも状況が改善されていればいいのだが...。

いま自分にできることは鼻洗浄だ

少なくとも、ウエちゃんが受診した仙台赤十字病院の耳鼻咽喉科では、この鼻咽腔炎もIgA腎症の病巣となっている可能性が認識されていた。松谷先生も「首から上にある炎症、全部しっかり治そうね」とおっしゃていたし、そういう意味では堀田先生と同様に、患者としては任せて安心な気がする。

塩化亜鉛の塗布は、自分ではできない。そこで、患者が自分でできる代わりの方法としては、スポイトを使って馬油を鼻孔に注入するというのもあるらしい。ウエちゃんは、さらにその代わりにというか、その松谷先生に奨められた鼻洗浄(鼻うがい)を始めた。鼻咽腔の内壁に付着したホコリや雑菌を洗い流すのだ。

鼻洗浄した後は、鼻の中がスッキリする感じがして、そう言われてみれば肩こりも最近ラクになってきたような気がする。とはいえ、根が単純なので、定かではないが...。ともかく、鼻洗浄でも鼻咽腔炎には一定の効果は望めるらしい。毎日しっかり続けていこうじゃないか。


「鼻咽腔炎」に関するコラム

最後に、この「鼻咽腔炎」について堀田先生が運営するIgA腎症・根治治療ネットワークのウェブサイトにある記事とコラムを紹介しておこう。もちろん、一読の価値アリ。

それでは、アディオス、アミーゴス!

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